姉ちゃんを振るやつなんていないよ

画像はイメージです
10年くらい前、姉17、俺15の時の話。

姉がなんかビデオを借りてきた。
ビデオ屋から帰ってくるなり、俺の部屋に入ってきてこれ一緒にみようと無理矢理ビデオデッキにセット。
当時ウチにはビデオが俺の部屋かリビングしかなかった。

「リビングで見ろよ!」といったけど、「お父さんがいるから」と、とっとと上映会を始める姉。

なんだか詰まらん恋愛ものっぽくて俺は興味をなくしてベッドに寝そべって漫画を読み出したんだけど、いつの間にか姉も横に寝そべっていて、ビデオを見ていた。
ふと姉の横顔を見るとなんか感動して泣いてる。


そんで、映画も終わり、エンドロールが流れてたときの会話。
本当はもっと長ったらしかったけど、こんな感じ。

「あー、いい話だった」


「姉ちゃんさぁ、こんなベタな恋愛ドラマで泣けるの?」

「恋愛経験の無い子供にゃわからんのよ」

「姉ちゃんだって彼氏とかいたことねーだろ?」

「好きな人はいるよ」

「片思い?」

「うん」

「ふーん」

「絶対実らない片思いだけど」

「はぁ?」

「まー、アレだ、そういうこと」

「なんで?とりあえず告っちゃえばいいじゃん」

「そー簡単にはいかんのだよ」

「なんで?」

「うっさい」

「チキンが」


「大人の事情ってもんがあるんだよ」

「よくわからん」

「だからこういう映画は好き」

「ふーん」

「決して結ばれないもの同士が心を惹かれあう系なやつね」

「でもこれは所詮映画でしょう」

「何がよ?」

「姉ちゃんはちゃんと好きな人には告るだけ告っちゃえるじゃん」

「だから・・・」

「あたって砕けろっていうじゃん」


「それができたら苦労は」

「大丈夫だって、姉ちゃん可愛い部類の顔してるから」

「・・・」

「姉ちゃんに告られて振るやつなんていないよ」

「・・・」

「大丈夫だって」

「そうかな?」

「そうだよ」

「そっか」

「うん」


「・・・」

「頑張って」

「じゃあさ」

「何?」

「付き合ってよ」

「ん?どこに?」

「そうじゃなくて」

「何を?」

「あたしと付き合ってっての」

「どこに?」


「だからー・・・」

「え?俺?」

「そうだよ」

「え?」

「姉ちゃんを振るやつなんていないって言ったのはアンタなんだからね」

「ええ、、え」

「・・・」

「・・・」

「ほらみろ、やっぱひいてんじゃん」

「あ、いやひいてないよ」


「だから無理だって言ったのに」

「ごめんごめん、その、なんていうか」

「嘘だよ、冗談」

「え?」

「からかってみただけだよ。そんなまじめに謝らなくて良いから」

「冗談?」

「そうだよ、じゃあね」

「あ、うん」

そのままビデオテープを取り出し、自分の部屋に戻る姉。
しばらく姉とは気まずい関係が続いた。

その2年後くらいに姉の大学合格の記念に家族旅行行くことになった。
旅館で両親がくつろいでいる間、姉と二人っきりで付近を散策してて、海が見渡せる絶景なところのベンチに並んで座った。
その時に何気に「あのときに話は本当に冗談だったのか?」という話題をした。

やっぱり冗談ではなく、俺のことが好きらしくて、付き合ってもいいよと返事をした。
ベンチに座ったままキス。
なんかすごくお互い照れくさくなって、姉がずっと俺にしがみついたままだった。

旅館に戻って両親に「遅かったじゃないか」と言われて、なんとか誤魔化した。

Hした話は省略するけど、その後本当両親から家族構成についての真実を告げられ、俺と姉は、それぞれ再婚の母と父の連れ子で、血が繋がっていないことが判明。
じゃあ、ってことでついでにカミングアウトした。
まぁ法律上結婚できなくもないからいっか、ってことで両親公認になって今に至る。

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